2006年8月 2日 (水)

恩田陸「エンド・ゲーム」

0608_onda_tokono3 恩田陸の常野シリーズ3作目「エンド・ゲーム」。(第1作目は「光の帝国」、第2作目は「蒲公英草紙」)

Amazonの内容紹介はこんな感じ:

出版社 / 著者からの内容紹介
「常野物語」の最新作、早くも登場!
「裏返さ」なければ「裏返される」??正体不明の「あれ」と戦い続けてきた拝島親子。だが母が倒れ、残るは一族最強の力を持つ娘だけに。息もつかせぬ展開の果てに、驚愕の真相が明らかに!

内容(「BOOK」データベースより)
裏返されたら、どうなる?正体不明の存在「あれ」と戦い続けてきた一家。最後のプレイヤーとなった娘が誘い込まれたのは、罠と嘘の迷宮だった。「常野物語」最新長編。

「光の帝国」ですっかり心を掴まれてしまったのだけど、「蒲公英草子」ではちょっとがっかりさせられた。3作目となる本作でどうなるか・・・と期待半分、不安半分で読み進めました。

まず最初に、この作品も前作と同じく、「光の帝国」を読んでから読んだ方が良さそう。用語についていけなさそう、というのもあるし、結論を先に言ってしまえば、やっぱり「光の帝国」の方が面白い。

だけど、この「エンド・ゲーム」は読む価値があった。この作品のベースになっている短編「オセロ・ゲーム」は常野シリーズの中でもちょっと独特というか、肉感的なグロテスクさが漂う作品で、他の作品とちょっと違う風合いを呈していた。私はその感触がこう咽に突き刺さった骨のように気になって頭から離れなかった。ので、こうした中~長編の題材に「オセロ・ゲーム」が使われているのは、実に期待をかきたてられた。

本作品のテーマは、やはり「価値観を疑え」ということだろうか。いつも「オセロ・ゲーム」のように白黒はっきりつけられるとは限らない、目上の人間の言う事がいつも正しいとは限らない、正しいものがいつでも・いつまでも正しいとは限らない。

特に、常野の超能力が陳腐化していくというテーマ周辺は、実に切なかった。これは私たちエンジニアにも言えることで、今まで色々と身に付けて来たつもりの知識・スキル・経験が、本当に今でも役に立つのかどうかということは常に問い続ける必要がある。それは超能力の世界でも同様・・・切ない。

ラスト近辺の慌てっぷり、バタバタした感じは、賛否両論だろうなあと感じた。「解決は?これで終わり?」と思う反面、「白黒きっちり説明されるよりも、これからの作品を楽しみにしよう」と思うところもある。まあ、これはこれでいいんじゃないだろうか。

10点満点で8点。

常野だより」なるwebサイトを発見。こういう世界観がしっかりしている作品には、こういうwebサイトがあるといいね。

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2006年7月31日 (月)

横山秀夫「クライマーズ・ハイ」

0607_yokoyama_clim_1雫井脩介の「犯人に告ぐ」が実に面白かったので、この手の本が読みたくなった。 となればまずは本家(?)の横山秀夫。年始に読んだ「半落ち」のコメントで、たにじんが薦めてくれた「クライマーズ・ハイ」を読みました。

Amazonの内容紹介はこんな感じ:

内容(「BOOK」データベースより)
1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。

何と言うか・・・主人公の悠木がとにかくオヤジとかぶって、非常に複雑な思いをしながら読んだ。この作品のテーマは組織であり、親子であり、報道。そして何より全体を貫くのは、「世代」。世代とは何か、それはどのようにして作られ、どのような仲間意識と断絶を生むのか。そして世代交代。

私たちもこの現代から、新たな次代への過渡期に生きている訳で、その中で「世代とは何か?」ということを改めて考えさせるとても良い作品だった。ただ悪く言えば、旧世代の感覚にどっぷり漬かった視点から物分りの良い年長者を演じて悦に入っているような意識も多々感じられた。それもまあ作品のテイストではあるのだが、少なくとも今の私にはあまり心地の良い視点ではなかった。この辺りは、きっとこの本をもっと若い時や、もっと歳を取った時に読めばまた違う印象を持つ点なのだろう。

とにかく泣いたのは、墜落しつつある飛行機の中で、ある乗客が家族に宛てて書いた遺書の一文。

「本当に今迄は 幸せな人生だったと感謝している」

これは実際にあった遺書の文章であり、横山秀夫によるものではないわけなのだけれども。自分はおそらく死ぬだろうとわかった段階で、家族にこのような文を残せる人間というのは、どのような人間だったのだろうか。私が同じような状況に置かれた時に頭に浮かぶのがこうした感謝の言葉であるように、私自身がありたいと思った。

 

グダグダといろいろ書いてしまったが、要するに非常に面白かった。「犯人に告ぐ」を読んだ時は、「横山秀夫の時代も終わり、雫井脩介の時代が来るか?」などと思ったが、こうして続けて2冊を読んでみると、二人の目的地はまるで違っていた。雫井脩介は雫井脩介で実に素晴らしかったが、横山秀夫は横山秀夫で凄まじい境地に達していた事を認識した。

10点満点で・・・9点かな。

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2006年7月25日 (火)

雫井脩介「犯人に告ぐ」

0607_shizukui_hannninn本屋をうろうろしていて、雫井脩介の本についているポップがぐっと来た。試しに買ってみた「火の粉」が「上手い!」と思わせる内容で、人間の内面というものを実に見事に描写していた。

その後も「虚貌」も面白くて、2005年の「このミステリーがすごい!」8位に入った本作品「犯人に告ぐ」を今回読むに至りました。

Amazonの書評はこんな感じ:

内容(「BOOK」データベースより)
連続児童殺人事件―姿見えぬ犯人に、警察はテレビ局と手を組んだ。史上初の、劇場型捜査が始まる。

舞台の設定はなんとなく宮部みゆき「模倣犯」を思い出す。でも内容的には宮部みゆきと言うよりは、横山秀夫かなあ。

今回の作品は、組織というものの内面がよく描かれていて、読みながら本当に横山秀夫を何度も思わせるものがあった。次世代の横山秀夫と言ってもいいかもしれない。

特に決めの台詞が本当に良かった。「犯人に告ぐ。今夜は震えて眠れ」にはぐっと来た。いや~格好いい!(まあ実際には台詞はちょっとずつこれと違うのだけど)

また、最後の方の台詞にもゆったりと感動した。 「人を叩き過ぎちゃあ、いかんのです・・・」 「叩けば誰でも痛いんですよ・・・」 「痛そうじゃないから痛くないんだろうと思ったら大間違いだ・・・それは単にその人が我慢してるだけですからな」

終章の辺りはちょっと面白さやまとまり、読後感に欠けるところがあって、これが実に残念・・・。まあ無難な着地はしているんだけど、ここにもう一味あったら「このミステリーがすごい!」1位は堅いだろう、と思わせるぐらいの出来だった。あと少し、本当にもう一息ですごい名作。

本を読んでいてここまでテンションが上がったのは結構久しぶりかもしれないというぐらい、一気に読んでしまいました。この本・この作家は、お勧め。これからもどんどんいい本を書いてくれると期待しています。

10点満点で8.5点、いや9点。

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2006年7月18日 (火)

恩田陸「ライオンハート」

最近なんだか恩田陸づいている。今回は「ライオンハート」。060717_onda_lionheart

Amazonの書評はこんな感じ:

内容(「BOOK」データベースより)
それがどうして始まったのかは分からない。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか、手違いなのか。私たちは何度も出会っている。結ばれることはない。でも、離れた瞬間から、会う瞬間を待ち続けている―生まれる前も、死んだあとも。あなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。いつもいつも。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。いつも、うれしかった。覚えていてね、わたしのライオンハート…。いま最も注目を集めている作家・恩田陸が贈る心に響くラブ・ストーリー。

内容(「MARC」データベースより)
離れた瞬間から会う瞬間を待ち続けている。生まれる前も、死んだあとも-。いくつもの時代を必死に生き、細胞に刻まれた想いを頼りに、束の間出会い別れていく男と女。求め合う二人の感情を描く連作集。〈ソフトカバー〉

運命の相手とか、生まれ変わっても貴方に会えるとか、刹那の出会いとか、想い合っても結ばれないとか、なんだか少女漫画の定番っぽい設定に、軽く引きながらも読み進める。短編のような作品を重ねながら、徐々に物語の核心にせまっていくような構成の作品。こういうのって寝る前にちょっとずつ読み進めるのにぴったりで良い。

面白かった。やっぱりと言うか意外にと言うか、何度か泣く羽目になった。まあこういう雰囲気が鼻につくという人には向かないだろうけれども、たまにはこういう本も悪くないと私は思う。

オチ(カラクリ?)がちょっと弱い感じがあって、この辺は「うーん残念・・・」と感じたけど、まあこの作品のポイントは決してそういうところではなく、恩田陸が真面目にしっかりと取り組んだ少女漫画的なこの世界を楽しむべきなのだろう。耽美的で良かった。

10点満点で7.5点。

恩田陸はこういう女性視点の作品が実に上手い。「夜のピクニック」もそんな感じだったし、特に「ネバーランド」は、女性から見たら男子高のイメージってこんな風なんだろうな、って思った。

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2006年7月15日 (土)

恩田陸「蒲公英草紙―常野物語」

 恩田陸の常野シリーズ2作目、「蒲公英草紙」。(第1作目は「光の帝国」)0607_onda_tanpopo

 光の帝国にも出てきた一家も出てきて、光の帝国から読んでいた人には「ニヤリ」とするところもちょいちょいあるような作品。

 今作は前作のような短編集ではなく、1つの中編作品。印象としては、光の帝国が1時間の連続ドラマだとしたら、これはスペシャルの2時間ドラマという感じ。

 とりあえず泣いた。淡々とした澄んだ視点からの描写は実に見事で、「常野」というものがどう見られるのかということを、じっくりとうまく書き上げたと思う。

 だけど「光の帝国」に匹敵する面白さだったか、というと・・・うーん。小気味良く短編集を並べた前作の方が、遥かに面白かった。まあ前作で「常野」にはまったという私のような人はいずれにせよ読まなければならない本だとは思うけど、そこまでじゃないという人は「光の帝国」で十分だと思う。あれは面白かったもんな~。

 10点満点で7点。3作目の「エンド・ゲーム」に期待。

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2006年7月14日 (金)

貫井徳郎 「妖奇切断譜」

 東京へ向かう新幹線の車中、その他移動中に読了。0607_nukui_youki

 貫井徳郎が直木賞候補に挙がっていたことで、ちょっとまた読んでみようと思って図書館で貫井徳郎の本をぱらぱら見ていたら、この「妖奇切断譜」も貫井徳郎の代表作のひとつであるというような書き方をしていたのを見て、借りてみました。

 まずは誤算がひとつ。どうやらこれには「鬼流殺生祭」という前作があるらしく、そっちから読めばよかった。そのせいか、登場人物の記述が不十分というか、なんだかピンと来なかった。

 そしてグロテスクだった。なんというか、食事時に読みたくないようなタイプのグロテスクさ。こういうのあんまり好きじゃないんだよなあ・・・。

 そんなこともあり、いまいち楽しめなかったというのが感想。最初の話のふくらませ方は割と良かったのに、中盤を越え結末が近づくと、どうにもガタガタと音を立てて話が崩壊していっているような印象。なんというか、大枠だけにとらわれて、肝心な細部がすっぽり抜け落ちているというか。もちろんこの作品にも見るべきところは多いのだけど。

 きつい事を言えば、この作品を読む価値は薄いと思う。貫井徳郎の作品が読みたければ「慟哭」「症候群シリーズ」がいいと思うし、こういうテイストの作品が読みたければ、京極夏彦をお勧めする。(この本に該当するのは「魍魎の匣」かな)

 もちろん言うまでも無く貫井徳郎は現代の優れた小説家の一人だと思う。それだけに残念。とは言え貫井徳郎の魅力がこれで減じた訳でもないので、今後も彼の作品は読んでいこうと思う。

 10点満点で6.5点。

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2006年7月 9日 (日)

アンディ・ライリー「自殺うさぎの本」

 本屋はいい。例えどんなにネット販売が主流になっても、本屋の良さというのは、そう簡単にはなくならないだろう。

 まず本屋はにおいが良い。新しい本のにおい、雑誌のにおい、そういうものがブレンドされた空間がまず良い。そして考え抜かれたレイアウトが良い。どの本を平積みにするか、どんな軸でコーナーをまとめるか、どの本にどんなポップをつけるか、そしてどの本を売りたいのか。(なので「本屋大賞」には期待している)

 話がずれていきそうなのだけど、今回述べたい本屋の良さのひとつは、新しい本に出会える可能性があるということだ。自分のまったく知らない作家・ジャンルの作品を思わず手に取り、「おぉ、こんな本があったのか!」と思えるというのは素晴らしい事だ。0607_bunnysuicide1

 で、そんな感じに先日出会った(というか嫁が本屋で読みふけっていた)本がこれ、「自殺うさぎの本」。続編「またまた自殺うさぎの本―まだまだ死にたいうさぎたち」もあるらしい。

 ひたすらうさぎ達が色々な方法で自殺していくという、どう聞いてもブラックでシュールな内容なのだけど、これが実に笑いを生む。その自殺方法がやけに遠回りで回りくどい(場合によってはよくわからなかったりするぐらい)ということや、うさぎたちの無表情さが、実にいい具合なのだ。 0607_bunnysuicide2

 著名人も絶賛しているらしい。

こんなにファニーでバニーな本は他にない(エルトン・ジョン)
綿密な取材の末 完成された、今年度の最高傑作(ヒュー・グラント)

 どんな感想だ。

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2006年6月10日 (土)

リリー・フランキー「美女と野球」

Frankey_1 うちの嫁も大ファンの、リリー・フランキー氏の本を初めて読みました。まあ言ってみれば「東京タワー  ~オカンとボクと、時々、オトン」を読むための助走というか。

1995年前後頃の様々な雑誌に載せたエッセイをまとめた本。氏の言動自体も対象を選びそうだけれども、本もやっぱりそんな感じだった。品の無いネタが予想以上に多かった。そして、とても面白かった。

リリー・フランキーの言動やキャラクターの良さは、ルールやモラル、世の風潮などにとらわれないある種のパンクにあるのだと思うのだけど、そうした突き抜け具合や真っ直ぐなところが感じられて、気持ち良かった。個人的な事を言えば、女性のヒゲ論や双子ネタなどがツボにはまった。

特に次の下りにはグッと来た。(氏のエッセイに「そんな奴らイルはずがない。作り話をするんじゃない」とコメントした読者に対して:)

自分の知らない事や理解できないことは無いモノと決め込んで、そんな奴呼ばわりする。あんたがどれだけ立派な生活をしているかは知らんが、あんた以外の人間はみんな、あんたじゃない。あんたの知らないところで、それぞれがそれぞれの環境で暮らしているんだよ。だからボクは出不精で面倒臭がりだけど、なるべく色んな人に会って自分が当たり前に思っていることを修正したいと思っている。自分の考えていることが正しい、と思うことが怖いからだ。

これはこのエッセイの根底に流れる意識の一つで、他にも既存の価値観や意識、権威に対する疑問などのネタも多い。

こうしてサラリーマンを長い事やっていると、得るものもあれば失うものもある。そのひとつが、「世の中はこういうものだ」という意識だろう。経験を重ね、知っていることが増えるにつれて、世の中の平均値や最頻値というものがわかってくる一方で、そうでないものに対する意識がおろそかになりがちでもある。「普通に考えればこうだろう」という意識が、10年前に比べればはるかに強くなっていることを感じる事も多い。

そういう私の意識に、この本はいい刺激になった。東京タワーを読むのが楽しみだ。

10点満点で8点。

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2006年6月 1日 (木)

東野圭吾「容疑者Xの献身」

 「探偵ガリレオ」、「予知夢」から続く、いわゆるガリレオシリーズ第三段にして第134回直木賞受賞作品の「容疑者Xの献身」を今更ながらやっと読みました。探偵ガリレオ、予知夢は文庫本だったのだけど今回はハードカバー。どれだけ長編だろうと思っていたのだけど、出張に向かう電車を半分も行かないうちに読み終わってしまいました。

 前にも書いたように、このシリーズは推理小説としてトリックが意外とかそういうものではなく、登場人物のキャラクターが個性的で楽しめる。今回は草薙・湯川の二人に加えて天才数学者の石神が登場。Amazonのレビューはこんな感じ:

出版社 / 著者からの内容紹介
数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか

内容(「BOOK」データベースより)
これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。

まあ人目を引くためのレビューだからしょうがないと思うけど、「数学だけが生きがい」「命がけの純愛」・・・大丈夫かなあと心配になる。宮部みゆきも直木賞受賞作は「理由」だしなあ・・・。

とか不安を胸に読んだのだけど、面白かった!東野圭吾作品のベスト5には間違いなく入る。「秘密」「白夜行」はやっぱりずば抜けてるし、それに比べると大きく見劣りしてしまうけど、ガリレオシリーズの中では段違いに面白かった。

石神のストーカーすれすれの恋の重さ、この描き方は実に見事。湯川が草薙と石神との間、社会的責任や真実と友情や愛情の間とで悩むところも良かったし、湯川と石神が交わし合う台詞も良かった。「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけ」。石神の行為を絶賛するのではなく、その想いの(色々な意味での)危うさをちゃんと描けていたところが良かった。「『純愛』って言えばなんでも許されるとか思ってんじゃねーぞ!」という作者の想いに共感。

でも一方で、期待に対する不満もある。

まず本来の主人公である湯川を筆頭に、キャラクターがあまり描かれていない。特に湯川のキャラクターは今までのガリレオシリーズの方が遥かによく描かれていて、この作品から読んだ人には伝わらなさ過ぎると思う。まあそれは他の作品も読めば済むだけのこと。でも石神ももうちょっと掘り下げないといけないんじゃないかと思うし、花岡親子もまだまだ描写の余地があるんじゃないだろうか。まあ映画が2時間の枠に収めないといけないように、小説にも長さの制限はあるだろうから、言い出しても切りがないと思いはするのだけど。

また、物理学者vs数学者の天才同士の戦い!というものを期待してしまったけど、そんなものは今回は微塵もなかった。悪く言えば「天才数学者ってそんなものかよ!物理学者もそんなものかよ!」というところ。自首すすめろよ。

 

とか色々文句もつけたけど、評価としては10点満点で9点。面白かった。読み終わった後の満足感がなんとも言えず心地よかった。読む価値あり。まあでも「探偵ガリレオ」か「予知夢」は先に読んだ方がいいかな~。と思って嫁には先に探偵ガリレオを読むように言いました。

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2006年5月24日 (水)

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」

またもや村上春樹の再読。今度はちゃんと第1部から第3部まで読みました。

これも最初は学生時代に読んだのだけど、あまりちゃんと理解できた気がしなかった作品のひとつ。あと長くてしんどかった。

この作品前半で主人公の奥さんが家出をしてしまうのだけれども、この部分を読んだ時に感じるものが学生時代と大きく変わっているのを感じた。具体的に言うと、夫婦の在り様の機微が結婚した事で理解できるようになったということだろうか。あまり考えたくない話だけれども、私の嫁だって家出をしてしまう可能性というのは0ではない。誰だってそうだろう。そしてそうなってしまったら、それがどれだけ自分にとって衝撃となるか、いかに自分が自分でいられなくなるかを想像して、その怖さや切なさを共感できた。これは以前は得られなかった感想。

全体としては、どのような状況でも(地味に)戦い続ける姿勢が気持ち良かった。それから、奥さんを信じ続けること、自分の歩いてきた道を顧み、自分を掘り下げること。

村上春樹の小説に出てくる主人公は、現実や出来事に違和感や距離感を感じ、あまり物事を主体的・能動的に捉えない(捉えられない)タイプが多いように思う。様々な状況で現実を生きていかなければならない私達には、こういう生き方もある種の清涼剤になると思うのだけれども、同時にそれによって何かを奪われていないかと心配になってしまう事がある。その点では、今回のオカダトオルは必要な事を必要なだけ行い、目的を達成したという点で読後感がとても良かった。

というわけで、間違いなく前回読んだ時よりも楽しめた。全て理解できたかと言われるとつらいところだけれども。まあそれにしても、やっぱり内容の割に長かった。出張に持っていくならせめて文庫版にするべきだったなあ。

これもノルウェーの森と同じく、採点はパス。

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2006年5月17日 (水)

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

Amazonで伊坂幸太郎作品の一覧を見たら「陽気なギャングが地球を回す」が一番売れているとのことだった。調べてみたら映画化されているのだね。

で、読んで見ました。全体的な感想としては、面白かった。脳味噌をほとんど使わずに楽しめる系の作品。映画もそういうテイストに仕上がっているんだったら、結構楽しめるんじゃないかなあ。

ただ難を言えば、前回の「重力ピエロ」の感想文でも書いた「展開自体はオーソドックスというか読める展開だし、ちょっと冗長な感じもした。キャラクターは良いけど、良く描けているかというと難しいところ」という文章がそっくりそのまま今回も使える。まあ作家の味といえば味なのだけど。

(今回も)総じて言えば、面白かった。でも私はもっと練りに練った作品が好きかなあ。こういうのは好みが分かれるところだね。

10点満点で7.5点。

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2006年5月14日 (日)

村上春樹「ノルウェーの森(下)」

色々あって出張先からそのまま実家へ向かい、そのまま出張先へ、としばらく自宅に帰らない日々を送る羽目に。その際、実家の近くの古本屋で100円で発見した「ノルウェーの森(下)」。100円とは思えない綺麗な状態だったので、思わず買ってしまいました。

この本は村上春樹の本の中でも最も売れた本(多分)。上巻が赤一色、下巻が緑一色というインパクトのある装丁や、帯の「100パーセントの恋愛小説」というコメントと相まって普段は本をあまり読まない層にも売れたよう。

勿論既読。しかし当時この本にすごく惹かれる何かがあったかと言われると、そこまでではなかった。今回はそういう状態での、下巻からの再読となりました。

で感想なのだけど、思っていたよりもずっと良かった。前回読んだ時はどうも直子に感情移入していた傾向があって、緑にあまりいい印象を持てなかった。しかし下巻から読むと、主役は緑と言ってもいい展開で、とてもすっきりして読めた。「春の熊」「人生はビスケットの缶」などのぐっとくる台詞や、永沢さんのキャラクターなど、この作品の良さを存分に味わえた。こういう読み方もあるのかもしれない。

永沢さんによれば、努力と労働は違うもの。これは真実だ。しかしつい一緒にしがちでもある。自分の生き方を見直せた、この一文に出会えただけでも読んだ価値があった。

再読でもあり、好きな作家でもあり主観が入りすぎるので、採点はパス。

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2006年5月10日 (水)

アンドリュー・パーカー「眼の誕生」 カンブリア紀大進化の謎を解く

カンブリア大爆発と言われる現象がかつてあったらしい。5億数千万年前に、地質学的にはほぼ一夜とも言えるほど短い期間で、それまで数種類だった動物の「門」(動物における分類上では最上級の分類)が一気に三十数種類まで増え、その後はほとんど増減せずに今日に至っているようだ。すげー。

このカンブリア大爆発を一躍有名にした書籍には他にもスティーヴン・ジェイ・グールド の「ワンダフル・ライフ」が有名らしいのだけど、wikipediaによれば初版が1993年ということもあり「執筆から時間がたっており、現在もバージェス動物群とバージェス頁岩について研究が進められているため、本書の内容も最新の成果をもとに再検討する必要がある」ということのよう。読んでみようかな、どうしようかな。

あやうく違う本の話になりそうだったけど、今回読んだ本は「眼の誕生」。著者は30歳台のまだ若い生物学者、アンドリュー・パーカー。Amazonにもある内容紹介がぐっと来る。

進化論の祖ダーウィンが終生悩んだ謎が二つある。

一つは、なぜカンブリア紀以前の地層から化石が見つからないのか? もう一つは、眼という「完璧にして複雑な器官」が進化によって説明できるのか? 本書によって、この二つの問いがふいにつながり、眼の誕生がもたらした壮大な進化ドラマが見えてきた。」

ダーウィンが進化論において眼に悩んだという話は有名だと思うのだけど、カンブリア爆発の話は知らなかった。不覚。この本はその2つの謎に答える「光スイッチ説」の紹介なのだけど、説そのものを語るだけでなく、著者パーカーがその説にたどりつくまでの半生記となっている。

生物学者が、どのような材料から、どのように考察し、どのように立証し、どのように結論をうち立てるのか、というのが実に面白い。彼らの住む世界と私たちの住む世界とはだいぶ違うようだ。

残念ながら私には生物に知識がさほど豊富ではないので、パーカーの言っていることがどれだけ確かなのか、生物学という中でこの本がどれだけ正しく、また新しいのか、ということに関しては全然わからない。考察や推論も「それでいいの?」と感じるところもちょいちょい。

でも、この本は面白い。読み物として実に読ませる。普段はフィクションか実用書しか読まない私だけど、この本は楽しく、興奮しながら読んだ。学生の頃に教科書をワクワクドキドキしながら読んだ頃を思いだした。(もちろんそんな教科書はそんなに多くは無かった)

フィクションじゃないので点数をつけるのもどうかと思うけど、10点満点で8点。

最近出張が多いので、本が進む。出張先まで分厚い本を持参(しかも時には数冊)で先輩にあきれられたりしてます。

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2006年4月28日 (金)

伊坂幸太郎「重力ピエロ」

そしてこの東京出張中は毎日電車通勤をしているので、電車の中で毎日本が読める。これは素晴らしいことだ。

というわけで電車の中で、伊坂幸太郎「重力ピエロ」を読みました。初の伊坂幸太郎作品。

冒頭は様々な時間・場所の話が飛び飛びで語られ、パッチワークのような様相。各章のタイトルも凝っていて、さながら初期の村上春樹をどことなく思わせるような組み立てで、良いのやら悪いのやら。

しかしながらそれに慣れてきた頃には、すっかり作品に引き込まれてしまった。キャラクターが魅力的で、作品のポイントも良い。

題材は暗く、そして重い。不幸な事件で生まれた血のつながらない兄弟とその両親が、どのように人生を歩んでいくか。人間の性について、運命について。正解の無いこうした問題に、屈折しながらも出口を求める兄弟と、彼らを心から愛する両親。

特にこの両親の人物像が素晴らしく、母親が競馬をするシーンなどで泣いた。そして何と言っても父親。こんな父親になれたらどんなに素晴らしい事だろうと思った。実際、自分あるいは自分の周囲で、血のつながらない親子という関係ができる可能性は0ではない。あるいは既にあるかもしれない。そうした時、それにどう向き合っていくか、という問いへのひとつの答えがこの作品だと思う。簡単な事ではないけれども。この点に関してだけでも、読む価値あり。

他の部分は、というと「うーん」と思うところも多々。展開自体はオーソドックスというか読める展開だし、ちょっと冗長な感じもした。キャラクターは良いけど、良く描けているかというと難しいところ。文章もたまに気になるところがあった。

でも総じて言えば、面白かった。もっと読んでみたい。次は「死神の精度」「チルドレン」「アヒルと鴨のコインロッカー」あたりを読んでみようかな。

10点満点で8.5点。

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2006年4月26日 (水)

東野圭吾「予知夢」

久しぶりの本レビュー。東京出張が入ったので電車の中で読了しました。

これは、以前にもレビューを書いた「探偵ガリレオ」の続編(第二作目)に当たる。基本的には第一作目「探偵ガリレオ」と同じような展開なのだけど、「探偵ガリレオ」がベースとしては理系的な知識による犯罪というものだったのが、今回のベースはオカルト。

予知夢、ポルターガイスト現象など、およそ理系的な内容とはかけ離れているテーマだが、それらを論理的に解き明かしていくというもの。物理学者湯川のあっさりとした推理がおもしろく、視点を変えて物事を見るということがどういうことなのか、わかりやすい。

前の作品を含め、犯人やトリックはさほど難しくいない。読みながらわかる犯人やトリックも多い。この作品の魅力はそこではなく、まるで素養の違う二人の主人公が、異なる視点からどのように現実をとらえているか、ということに尽きると思う。そしてまたこの二人のキャラクターが良い。一作目に比べてもより良くなっていると思う。前にも書いたけど、本当にテレビドラマ向きだなあと思う。

10点満点で7.5点。

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2006年2月 7日 (火)

式田ティエン「しずむさかな」

第一回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作。

新感覚で鮮烈な文章、と噂になったように記憶している。例によって図書館でばったり見つけたので、借りて読んでみた。

「きみは・・・」という語り口が独特。ということだけど、まあ確かに。でもちょうど最近、北村薫「ターン」を読んだところだったから、どうと言うこともないかな。

海の描写が美しくて、とても心地よい。潜りたくなった。独特の文章は確かに爽やかで、テーマの海ともマッチしており、個性的な雰囲気を作り出している。なかなかの才能の持ち主だと感じた。登場人物の一人であるCPが、さかなにからめて人生を語るくだりは、目新しさは無いものの、明快でぐっとくるものがあり、「機会があったらこのセリフを使おう」と密かに思うほどだった。

しかし、ミステリーとして、あるいは小説として出来がどうかという話になると、うーんと思ってしまう。伏線や謎と共にストーリーは進むが、全てが明らかになるのがやたら突飛だし、その「なるほど!」と思わせるところで「ふ~ん、そうだったんだ~」ぐらいのゆるい衝撃しか届かなかった。マンガで言えば「絵はいいんだけど、内容がな~」というような印象。

というわけで、10点満点で6点。才能があると思うので、もっと本を書いて欲しいところだけど・・・これしか書いてないのかな。

このミステリーがすごい!」大賞はミステリー好き&新しいもの好きなのにも関わらず案外読んでなくて、やっと最近読み始めたというところなのだけど、この前の「そのケータイはXXで」にしても、「逃亡作法─TURD ON THE RUN」にしても、どうもピンと来なくて困る。

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2006年2月 1日 (水)

貫井徳郎「崩れる」

サブタイトルに「結婚にまつわる八つの風景」とある通り、八つの短編から構成される短編集。

いずれの短編も日常生活にひそむ狂気や落とし穴を見事に描き出しており、リアリティがあるだけに非常に怖い。こういう不気味さを表すには、短編というのはかえって効果的ということを再認識した。

また、この本は結婚生活への認識を新たにする本でもある。嫁には優しくしようと改めて思った。結婚している人も、これから結婚しようとしている人にもお勧めできる。怖い意味で。

10点満点で8点。短編集で気軽に読めるし良い。ドラマ化にもってこいだ。

貫井徳郎は「慟哭」で「やられた!」と思った。「プリズム」はぐっとこなかったけど、「症候群」三部作も良かったし、今後も読みつづけるだろう作家の一人。

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2006年1月28日 (土)

筒井康隆「日本列島七曲り」

職場の先輩(変態)経由で別の先輩(変態)から借りた本。(どんな職場だ)

短編集で、これでもかと馬鹿馬鹿しい話が続く。この発想の凄まじさは天才としか言う他無い。これが昭和50年発行とは・・・すごい。なぜか解説は畑正憲。

なんだか別世界を覗き込んだような不思議な感覚。思いっきり笑ったし、今まで気付かなかった視点にも気付かされた。「陰悩録」「郵性省」は傑作。

10点満点で7点。いや8点かな。あー面白かった。

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2006年1月19日 (木)

東野圭吾「探偵ガリレオ」

東野圭吾「容疑者Xの献身」が直木賞を取ったらしいので、そのシリーズ第1作にあたる「探偵ガリレオ」を再読。

警視庁捜査一課の草薙刑事が、大学時代の知り合いの物理学者、湯川助教授と一緒に様々な事件を解明していくという短編集。短編のミステリーはあまり好きじゃないんだけど、空いた時間で気軽に読めるというメリットは捨てがたい。

理系と言われる人の殆どは、何らかの専門知識を身につけていると思うのだけど、そういう知識をうまく使えば従来とは全く違う事件が生まれるのでは?という発想に基づくようなトリックで短編が構成されている。おそらく理系の読者にとってはそれだけでもちょっと面白いと思うのだけど、また人物像がユーモラスによく書けていて楽しめる。そんな作品。読み返して、あらためてテレビドラマ向きだと思った。

10点満点で7点。

シリーズ2作目は「予知夢」。読んだっけ・・・(覚えてない)

東野圭吾との出会いは、学生時代の友人からの紹介。1冊目は「殺人現場は雲の上」。読みやすくて面白かったんだけど、「2時間ドラマ?赤川次郎?」って思った。2冊目は「名探偵の掟」。これも面白かったんだけど、まあ「ふーん」で終わってしまってた。

ただ読みやすかったこともあって、ちょいちょいと読んでいたのだけど、「むかし僕が死んだ家」「パラレルワールド・ラブストーリー」あたりでちょっと尋常じゃない胸騒ぎを覚え、「秘密」で号泣に次ぐ号泣。「大好きな作家」に一気に浮上した。

その後も「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」などでも悩まされ、そしてなんと言っても「白夜行」。100%の小説。これで私の中での不動の地位を確立した。

「秘密」「白夜行」、読んでない方は是非。

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2006年1月17日 (火)

瀬名秀明「パラサイト・イヴ」

第2回ホラー小説大賞受賞作品。

たまたまブックオフで100円で見つけたので、買って読んでみた。

生物系ホラーとでも言うのだろうか。妻の事故死を受け止められず、妻の肝細胞を培養してしまう生化学者。気持ちはわかる(のか?)。

前半はゾクゾクした。夜中に読んでたせいもあってか、物音がしたらビクッってしてしまってた。いい歳して。ホラー小説でこんな思いをしたのはラヴクラフトや貴志祐介以来かもしれない。(まあそもそもホラーは殆ど読まないのだけど)

設定も抜群と思う。描写も文章も悪くない。専門的な内容もわかりやすく書けている。けど・・・後半の展開はまだまだどうにかできたのではないかと思う。惜しいなあ。

あと脳死・臓器移植に関する記述が興味深かった。臓器移植に関わる人々の多方面からの心理にも触れていて、この部分だけでも読む価値あるかも。

10点満点で7点。

#祝!東野圭吾「容疑者Xの献身」直木賞受賞!早く読みたいな~。

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2006年1月15日 (日)

恩田陸「夜のピクニック」

第2回本屋大賞受賞作品。

恩田陸は「六番目の小夜子」ではまった。これはすごかった。今でも小説の中の光景を鮮やかに覚えている。そういう小説はそんなに多くは無い。その後も「光の帝国―常野物語」「三月は深き紅の淵を」などはぐっと来た。もうひとつ、という作品も多かったけど、十分個性的で読みごたえがあり、また私のようないい加減な本読みにもわかるほど成長を遂げている作家で、私は好きだ。そんな恩田陸の本が大賞を受賞したとのことで、これは読まねばと思っていた本をやっと読みました。

ノスタルジー。この一言が一番ぴったり来る。小説の舞台は高校の歩行祭というイベント。高校生活を懐かしく思い出し、じわじわと涙ぐんだ。こんな風に泣くことってあるんだってことが不思議だった。この本を読んでいる間は、私も高校生になって、一緒に歩行祭に参加しているような気分だった。もう一度高校生活をやりたいとは思わないけど、この本はもう1回読みたい。

この小説が対象にしている世代は、高校を卒業してだいぶ経つ世代だと思うのだけど、いま高校に通っている人や、これから高校に入る人にも読んで欲しいと思った。

10点満点で10点って言いたいところだけど、9.5点にしておきましょう。でもこの小説には余計なものも無いし、これ以上足すものも無い。そういう意味では100%の小説です。

今度は「ライオンハート」を読んでみよう。

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2006年1月 9日 (月)

上甲宣之「そのケータイはXXで」

この本は、第一回「このミステリーがすごい!」大賞で、受賞は逃したものの評判を呼び、話題作として出版されたとのこと。これも本屋で見かけてから、どうしようかな~と悩んでた本のひとつだ。

図書館で見つけたので借りて読んでみた。こういう悩ましい本に気軽に手を出せるのが図書館のいいところ。

ジェットコースタームービーのように、というのが一番近い言葉だと思う。息もつかせぬ展開で、ハラハラしながら一気に読んだ。厚い割に読むのに時間はかからなかったなあ。

面白かった。設定も良かった。

でも、もう読まないと思う。味が無いというか、深さが足りないというか。全体的にB級という感じがした。設定を活かし切れてないのも残念だし、光景も見えてこない。最後に満足という感じもしない。ケータイという新しい物を使ってる新しい小説なのだろうけど、今読むともう古い感じがする。(これは今更読んでる私が悪いのか)

10点満点で5点。

すぐ読めるし、気になる人は一度読んでみてもいいかもしれません。

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2006年1月 4日 (水)

重松清「流星ワゴン」

なんとなく前から本屋で気になっていた本。カバーのデザインのせいか、なんだかずっと惹かれていた。

とは言うものの、重松清の作品はひとつも読んだ事が無いこともあって手を出さずにいたのだけど、図書館で見つけたので借りてきて読んだ。

幽霊もの、というのか、タイムスリップという点でSFもの、というのか・・・。設定は変わってるかもしれないけど斬新とまで言うほどのものでもなく、話の筋も平凡。どうかなあと思うところもちょいちょいある。生きていくって大変だね、家族って大変だね、って思った。

しかしながら(我が家は実際に今、家族が大変なこともあってか)、とてものめり込んで読んだ。読み終わってみれば、「そうだな。頑張って生きていこう」と強く思えた。人生に立ち向かっていこう、できるだけのことはしようと決意できた(言い過ぎ)。重松清がそう思わせようと思って書いたんだったら大成功だ。

生きていく事が辛いと思う事がある人、家族の問題で悩みを抱えている人、やる気が出ない人、一度この本を読んでみるといいかもしれません。

10点満点で7~8点、というところかもしれないけど、こうして勇気や元気をもらえる本ということを評価して9点。こういう本に、いいタイミングでめぐりあえることはその人の人生を変えると思う。

重松清の本をもうちょっと読んでみよう。

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2006年1月 1日 (日)

横山秀夫「半落ち」

正月の初日の出旅行の中、飛行機の乗換えで3時間待ちという海外旅行並みの待ち時間があったので、本を1冊買って空港のラウンジで読んだ。それが横山秀夫「半落ち」。

とりあえずすぐ号泣。今年の初泣き。その後も何度か泣いた。

横山秀夫の本は「動機」を読んだだけだったのだけど、もちろん「動機」も面白かったけど、「半落ち」は実に読ませた。待ち時間の3時間なんてあっという間だった。というかまだまだ待てた。待ちたかった。3回は繰り返し読んでも楽しめたと思う。

横山秀夫の本をもっと読んでみよう。映画「半落ち」も見てみよう。未読の人は、「読むべき本リスト」に入れておくといいんじゃないでしょうか。

10点満点で9点。

#空港のラウンジって、ゴールドカード持ってたら無料で使えるのね。今後活用しよう。

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